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上田令子の新エネルギー政策

上田令子

東日本大震災より1年が経ちました。改めまして、亡くなられた尊い命に心からの哀悼の意を表し、今もなお癒えることのない傷を抱えて生きる被災された皆様にお見舞いを申しあげます。
震災以降、上田令子が出来ることは何かずっと模索してきました。
被災地支援は、発災直後から行って来ましたし、今後もライフワークとして続けていきます。
一方、政治家上田令子ができることは何か。
政策をつくり、閉塞感を吹き飛ばして国民に夢を見られる日本にしていくこと。
新しいエネルギー政策を、3.11に捧げます。

脱原発を模索。辿り着いた先は…

地震、津波、追い打ちをかけるように福島第1原発事故が発生し、今も甚大な被害を及ぼしています。「脱原発」に向けて、専門家が、政治家が、そして一人ひとりの国民、ことに「お母さん革命」を起こした母親たちが実に根気強く闘っています。
原発に頼らないエネルギーとして太陽光、風力、水力、マイクロ発電…模索も続いています。しかし、当面は火力発電に頼らざるを得ず、となれば当然CO2排出量は増え、京都議定書の6%の削減義務を果たせず1兆円規模の違約金を科されるのではないかという危機感を私は持つに至りました。世界規模の不況の煽りをうけ、経済は低迷、3.11という大きな痛手を受け、東日本の人々の救済もままならない日本が、ペナルティを支払うなどとは政治家の末席にいる者としていてもたってもいられるものではありません。
CO2排出問題と、新しいエネルギー政策を解決できる妙案はないモノか?!
私が今まで考えてきた日本の取るべき道を語らせて頂きます!

日本は海洋国家です。坂本龍馬も江戸城からではなく海から日本を見ていました。
私も、彼に習って永田町からじゃなく海から日本を見てみると…、見えない風景が見えてきて海辺の町、江戸川発船中八策エネルギー政策版を思いつくに至りました。

東日本沿岸を襲った津波は、荒ぶる海の象徴である一方で、私達母親が赤ちゃんを育む胎内の羊水は、海水のPh(酸性・アルカリ性の程度をあらわす単位)と同じといわれ、生命の故郷「母なる海」でもあります。

この「海」に解決のヒントがあったのです。

CO2削減の影の主役?ブルーカーボンって何?!

CO2削減に貢献するものというと「森林」というイメージがあると思います。でも、森の木々よりも、ことに私達江戸川区民にはとても身近なところでCO2を吸収してくれているところがあります。江戸川区の最南端ですよ。え?!葛西臨海公園の森?!惜しい!
その前に広がる「海」なのですよ!!

皆さん「ブルーカーボン」って言葉を知っていますか?
これまでのCO2削減の主人公、森林等の陸上生態系によるCO2吸収源が「グリーンカーボン」、現在脇役というか、セリフも与えてられない通行人のような海洋生態系によるCO2吸収源が「ブルーカーボン」です。

世界で人類が1年間に排出するCO2の量は72億トン。41億トンは大気中に放出され、9億トンがグリーンカーボンでお引き受け、毎度アリ。

さて残りの22億トンは誰が引き受けているのでしょーか?!

ハイ、そうです!ブルーカーボン、「海」なのです!!

ちなみに、陸上植物VS海洋生物をCO2吸収量で比べてみますと…

陸45% : 海55%

なんと、横綱陸山錦を寄りきって、前頭大海洋に軍配があがり、大金星☆というわけです。(いつから大相撲に…(笑))

「海洋面積は地球の約7割を占めていて、陸と海を単純に比較することは出来ない!」という向きもいらっしゃいますが、♪海は広いな大きな♪。海洋生物は太平洋の真ん中にはおらず、全海洋面積の僅か0.2%にしか過ぎない「沿岸域」に集中して生息しているのであります。葛西臨海公園の西なぎさ、東なぎさの干潟などは、まさに海洋生物のゆりかごなのでございます。

「沿岸」力でペナルティ回避へ

さらにワクワクさせることに、日本の海岸線延長距離は約3万5千キロで国土面積あたりの海岸線延長は先進国の中でも最大級。日本は世界的にもブルーカーボン貯蔵国なのです。沖縄本島より大きい国後、島根県より大きい択捉など、北方領土が戻ってくればロシアを超えて正真正銘の世界第6位に。早く戻って来ますように!!国土が狭い日本において、複雑な海岸線がいかに豊かな沿岸域と海洋生態系を産み出しているかお分かりいただけると思われます。今回リアス式海岸に津波が押し寄せたことが本当に悲しいことですが、だからこそ、「ブルーカーボン」という新しい発想をもって、東日本の沿岸部の再生のキーにしていけないか、と私は思うのです。
現在、日本は京都議定書の「6%削減」義務を果たすために官民で年間1兆円を投じて排出権の枠を買っています。さらに、既述しましたように、火力発電により排出量は増加、巨額の違約金を求められる可能性があります。時の外務大臣松岡洋右が椅子を蹴って国連を脱退し第二次世界大戦勃発の遠因となったことは我々日本人には忘れられない歴史的史実。まさか「払ってたまるか!」と京都議定書から強引に脱退するわけにもまいりません。

そこで、

「ブルーカーボン分でなんとか、お値引きできまへんやろか?」

と、ここは大阪商人で交渉してはどうか。
実は、京都議定書のCO2「6%削減」はグリーンカーボンのみの換算であり、ブルーカーボンが含まれていないのです。

さらに花のお江戸の鬼の女将であったら

「海洋生物の方が、よく働いているってのにねぇ、えぇ、換算しないなんてのはちゃんちゃらおかしいっての。ブルーカーボン入れずして罰則作るなんてのは、お話になりません。キッチリ脱退させて頂きます。」
とまで言うかもしれませんね。

排出権取引などのグリーンカーボンは、お金に換算する仕組みができてしまっていて、もはや地球環境保全よりも金融商品的な色合いになっているのではと私は危惧します。グリーンカーボンマネーとでもいいましょうか。それに、何しろ山林の管理は、やたらとコストがかかります。一方、海は事実上ほっといて55%。これが昔の日本の干潟を取り戻せばドドーッとCO2吸収量が増えるということです。これを換算していけば毎年1兆円節約できる、その分をことに、東日本沿岸域の保全に回していくといいのではないか?!と私は思うのであります。

現代版竜宮城 深海に眠る宝の山を探せ!

もっとワクワクは続きます。

今年の2月に次世代のエネルギー資源として期待される「メタンハイドレート」の世界初の試みである海底採掘が愛知県渥美半島沖で始まりました。 日本の領海は、このメタンハイドレートをはじめ、尖閣諸島の海底資源、沖縄近海東シナ海のガス田、レアメタルを含む深海泥などの鉱物資源が豊富だと言われています。浦島太郎は亀に乗って行った先は、深い深~い海の底。絢爛豪華なお宝眠る竜宮城。寓話には、意外と真理があるものですね、びっくりです。
現在、日本は化石燃料費に1年間で約23兆円も支払っています。原発を止めている限りもっと膨らむかもしれません。23兆円…。どこかで聞いた額。そう、10%に増税した場合の消費税の総額とほぼ同額!!
海洋資源の商業化が実現すれば、エネルギーを輸入に頼る日本にとって、待望の「メイドインジャパン」資源となり、増税しないで済むではあ~りませんか?!
もちろん初期投資はかかります、だからこそ民間主導で技術開発を進めて行く必要があります。労働組合などの既得権益団体にかけてきたコストを減らし、効率的な設備投資をすることで英国病から脱したイギリスのように日本も経済的な危機から脱することができるかもしれません。
最近フィリピンは、中国の強い反対にあいながらも東シナ海のガス田の入札に踏み切りました。なぜ、経済・軍事規模的に圧倒的に弱小なフィリピンが、中国に臆することなく南沙諸島の開発に踏み切れたかといいますと、石油メジャー(国際石油資本)に採掘を委ねたからです。資金力に乏しいフィリピンが、海洋資源の恩恵を双方メリットもありコストも負担する形で解決したことを見習って、すぐにでも日本も国をあげて始めるべきです。
なぜなら、日本がエネルギー調達に依存している中東の政治情勢、輸送コスト、為替リスクなどで頭を悩ますくらいなら、必要な設備投資を当初増加しても、そのコストは最終的に資源獲得でペイできるはずからです。この過程で生み出された、日本の叡智を集めた技術革新は、資源の構造変換を起こし世界を牽引することになりましょう。
この技術をもって、排他的経済水域、北方領土も含めた沿岸域を守り、「海洋環境の安全保障」をすることは、各国の賛同を得て、海の恩恵を世界中の人々が受けることになると考えます。

日本版サッチャー、日本のプラチナレディに

1960年代以降のイギリスでは経済が停滞し、閉塞感が充満していました。どことなく今の日本と似ていますね。これを打破したのは通称「鉄の女 The Iron Lady」マーガレット・サッチャー元首相です。(「マーガレット・サッチャー鉄の女の涙」http://ironlady.gaga.ne.jp/、主演のメリル・ストリープが主演女優賞を獲得、話題になりましたね)彼女が首相に就任して行った改革は、国営企業などを民営化し、これまでの殿方政治家は避けていた労働組合、すなわち政治的「火中の栗」をムンズとひっつかんで瓦解させ、労働の流動化を実現させてたこと。この改革がイギリス経済が息を吹き返した大きな要因と言われていますが、実は、サッチャーの就任期と同じくして、北海の海底油田(北海にある150余りの海底油・ガス田の総称)の事業化が軌道に乗ったことにあったのだとも言われています。

既得権益の解体と海底資源事業化を「鉄の女」が進め、イギリスを英国病から救ったのです。

イギリスは、四方を海に囲まれた、ヴァイキングの国。日本と同じ海洋国家の女性政治家であるマーガレット・サッチャーと、「母なる日本の海」に私は、日本の活路を見出しています。
イギリス経済をV字回復させた北海油田は5つの国の経済水域の境界線にありますが、日本と中国のような事にはなっていません。各国が対等な立場での交渉が可能であったからです。日本の海洋資源を虎視眈々と狙う他国からの脅しには絶対に屈せず、毅然とした精神を持った理性的な交渉を粘り強くしていくことが今日本に求められています。母親が我が子をとことん守りぬくように、政治家は、国民の生命と財産をとことん護らければなりません。
既得権益に浴すことのなく慎ましく暮らすほとんどの国民のため、何より子どもと若者達のため、時に心を鬼にして改革を断行する、「鉄」より若干固くてアクセサリーにも使える「日本のプラチナレディ-The Platinum Lady」と、私はなりたい。

取材協力:日本ブルーカーボン事務局
平成24年3月11日

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